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第284話 華枝の急病⑥

Auteur: 花柳響
last update Date de publication: 2026-03-25 06:01:58

 その言葉に、湊の肩がビクッと跳ねた。

 華枝様は、次期当主の座をただ無条件に湊に譲るつもりはないのだ。

 彼が「愛」を知り、「家族」の温もりを知った今。

 冷酷な判断を下さなければならない場面で、その温かさが弱点にならないか。泥を被り、血を流す覚悟が、本当に彼の中に残っているのか。

 彼女は、死の淵にありながら、湊の覚悟を試そうとしている。

「……僕の牙は、折れてはいません」

 湊が、静かに、しかしはっきりとした声で答えた。

「守るべきものができたからこそ、僕は負けない。龍一郎叔父上が何を仕掛けてこようと、僕がすべて叩き潰します」

 その淀みのない答えを聞き、華枝様は酸素マスクの下で、微かに口角を上げたように見えた。

「……そうか。ならば……」

 華枝様は、荒い呼吸の合間に、震える右手を自分の首元へとゆっくり伸ばした。

 パジャマの襟元をごそごそと探り、そこから、一本の細い紐に吊るされた
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